炭の余熱まで画になる ― 西麻布「いちのや」で源内を撮る | 料理の撮影は長年の経験を活かすラ・クレアシオン | Blog

西麻布のうなぎ店「いちのや」にて、¥14,000のコース「源内」を撮影した。先付けからデザートまで七つで一献。炭の匂いがすでに店内に沈み、卓上に揃った皿を前にレンズを構えるだけで、画が閉じてくる店だとすぐにわかる。 　

白焼の乾いた光、煮物の湿った艶、揚げ物の温度がつくる影──それらが主役のうな重の黒艶へ視線を収束させる。炭火が作る黒は深い。照明や後処理では触れない“物理の黒”がここにはある。撮影という行為は、それを邪魔せず拾い上げるだけで成立した。 　

デザートで畳まれたところまでを撮り終えて思う。よくできたコースは、順番ではなく「揃った状態」にこそ設計の芯がある。皿と皿の間に漂う湿りと静けさ、その余白までもが意図の一部として存在していた。炭の余熱まで含めて、一画で完結してしまう。そういう仕事の現場だった。

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