ぴあ発行『東京老舗名店』の取材で、柴又の 大和家 にて天丼 上を撮影した。
この店は「松竹宣伝部柴又分室」とも呼ばれ、映画『男はつらいよ』のロケ時には出演者の休憩所として使われていた場所でもある。渥美清 が好んで食べた丼としても知られており、その背景を踏まえた上での撮影になる。料理単体の美味しさだけではなく、その背後にある時間や記憶まで含めてどう画面に落とすかが重要になる。
天丼の撮影は、見た目のインパクトを強く出そうと思えばいくらでもできる。揚げたての艶や照りを強調し、コントラストを上げて派手に見せる方法もある。ただ今回はそういう方向には振っていない。老舗の天丼に求められるのは、過剰な演出ではなく、積み重ねられてきた確かさだと判断したからだ。
ライティングは抑制的に組んでいる。光を強く当てて艶を強調するのではなく、衣の厚みや海老の反り、全体の質量感が自然に見える位置にだけ光を置く。影もあえて残し、立体を崩さないようにする。明るさで引っ張るのではなく、形で見せるイメージだ。
色についても同じで、揚げ色を過剰に持ち上げることはしていない。天ぷらの色は微妙なグラデーションで成り立っているため、無理に強調すると単調な茶色になってしまう。あくまで自然な色の中で、海老天のボリューム感が見えるように調整している。
料理撮影は基本的に「今」を写す仕事だが、この天丼に関しては少し違う。目の前にある一杯は現在の料理でありながら、過去から続いている時間の上に成り立っている。その空気を壊さないために、演出を足すのではなく、引き算で整える。この判断が今回の撮影の軸になっている。
料理写真は美味しそうに見せることが前提だが、それ以上に「どう見せるべき料理なのか」を見極めることが重要になる。老舗の料理であればあるほど、その判断がそのまま写真の説得力に直結する。ここに、料理撮影の専門性が出ると思っている。
料理撮影の依頼については、 「料理撮影の依頼完全ガイド」でまとめています。
ラ・クレアシオン
住所:埼玉県草加市新栄1-13-5
サニーヒルズ103
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