「雷門の揺らめきと共に—三定・上天ぷらを撮る」

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浅草・雷門を背にして佇む老舗、三定(さんさだ)。天保八年(1837年)の創業と伝えられ、日本最古の天ぷら屋のひとつと称されるその風格は、通りすがるだけで江戸の空気をほんのり漂わせる。  


今回、ぴあMOOK「東京老舗名店」掲載用の撮影で、この三定にて「上天ぷら」を撮影してきた。奉られたその皿には、海老が二尾、小さなかき揚げ、そして野菜(なす)の天ぷらが並ぶ、実に生真面目な構成だ。  


揚げたての衣は、濃いめのごま油がふくよかに香る――これが三定の天ぷらのアイデンティティであり、揚げ色の黒味をもたらす。海老はぷりりと身を張り、衣はほどよく軽く、口に運べば油気に埋もれることなく、つゆと素材が互いを引き立て合う。小さなかき揚げには海老のかけらと野菜の切れ端が混ざり、その香ばしさがアクセントとして胸を掴む。なすの天ぷらは、衣と実との境界が透けるようで、なす自身の水気と風味が衣に溶け込む。  


撮影スタッフとして透明感と立体感をどう切り取るかが悩みの種だった。光と影を操りながら、揚げ衣の粒感、油の照り、海老の赤み、なすの切り口……それらをひとつの写真に封じ込めようとシャッターを切った。被写体としての天ぷらは、一見動かぬ存在だが、油の輝きや衣の表情が「出来たての瞬間」を語る。その生々しい質感を写し取ることこそが、料理写真の醍醐味である。  


三定では天ぷらはもちろん、天丼や天ぷらそばも評判高く、観光客だけでなく地元客にも愛されている。雷門を背景に、揚げ物特有のダイナミックさと老舗の品位を併せ持つこの一椀を目の前にすると、江戸以来続く「てんぷら屋という矜持」が確かに鳴っているのを見た気がした。  


MOOK掲載に向けて、この上天ぷらはただの被写体ではない。歴史と時間、素材と技を語る証人である。浅草を訪れた折には、ぜひこの一皿を目と舌で味わってほしい。




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