江戸前天ぷらの撮影方法|淡い揚げ色を美しく見せるライティングと色再現

query_builder 2025/10/02
料理撮影の専門知識
ブログ

丸の内の菊亭にて、ぴあMOOK「東京老舗名店」掲載用の撮影を行い、江戸前天ぷらのコースを撮影した。車海老や白魚、烏賊、季節の野菜といった流れで供される一皿一皿を、誌面用に丁寧に切り取っていく仕事である。


菊亭の天ぷらは、綿実油と淡口の胡麻油を調合し、代々継ぎ足されてきた丼つゆで味を整えるのが特徴だという。全体として非常に繊細で、揚げ色も淡い。料理撮影としては、この「淡さ」をどう扱うかが大きなポイントになる。濃い揚げ物であればコントラストで押し出せるが、淡い色の天ぷらはそうはいかない。無理に立体感を出そうとすると、すぐに色が飛んでしまう。


ライティングは硬すぎず、柔らかすぎずのバランスを探る必要があった。光を強くすれば衣のハイライトが飛び、弱くすれば衣の細かい凹凸が消える。そこで、光の面積と距離を細かく調整しながら、衣の立体感が残りつつ、白飛びしないギリギリのラインを狙っている。天ぷら撮影では、この「当てすぎない光」を作れるかどうかで仕上がりが大きく変わる。


色の再現も重要で、淡い衣はすぐに黄色に転びやすい。特にデジタルでは暖色方向に寄りやすいため、RAW現像で慎重にバランスを整えている。見た目の印象としての美しさと、実際の料理の色の正確さ、この両方を外さないことが料理撮影では求められる。


コース全体を通して見ると、どの皿も主張しすぎず、余白を感じさせる構成になっている。丼つゆも濃すぎず、揚げたての天ぷらを引き締めながら、どこか余韻を残す味わいだ。この“余白”の感覚は写真でも同じで、情報を詰め込みすぎず、空気を残すように構図を整えている。料理撮影では、写っていない部分をどう想像させるかも重要な要素になる。


江戸前の天ぷらは、強さではなく繊細さで魅せる料理だと思う。その繊細さを壊さずに写すには、光・色・構図すべてを抑制気味にコントロールする必要がある。料理撮影とは、足し算ではなく引き算で完成させる仕事だと感じる場面でもある。


東京の老舗を伝える一冊の中で、この天ぷらの軽やかな衣の質感や、揚げたての空気感が少しでも伝わればと思いながらシャッターを切った。料理撮影は、料理の形だけでなく、その背後にある技術や時間まで写す仕事だと改めて感じた撮影だった。



料理撮影の依頼については、 「料理撮影の依頼完全ガイド」でまとめています。

----------------------------------------------------------------------

ラ・クレアシオン

住所:埼玉県草加市新栄1-13-5

          サニーヒルズ103

----------------------------------------------------------------------

NEW

VIEW MORE

CATEGORY

ARCHIVE

TAG