先日、ぴあMOOK『東京老舗案内』の撮影班と共に、丸の内に佇む天ぷらの名店 菊亭 を訪れた。撮影対象は、まさに看板ともいうべき「江戸前天ぷらコース」。カメラを構え、緊張と期待を胸に、天ぷらが揚がる瞬を追った。
菊亭は、1951年(昭和26年)創業と伝えられ、丸の内の喧騒の中にも変わらぬ佇まいを保つ老舗である。なにより興味深いのは、その屋号の命名者が、あの 第44代内閣総理大臣・幣原喜重郎 であったという逸話である。店内には、幣原ゆかりの色紙の文言がひときわ重みを帯びて、静かに壁面を飾っていた。
撮影は薄暗がりのカウンター席で始まる。カメラマンは湯気の立つ鍋を前に、職人の指先の瞬きを切り取る。油がはぜ、衣が泡をあげ、素材が黄金色を帯びる。シャッターを押すたび、時間が止まり、香りと音だけが現場に満ちてゆく。
コースには、車海老や白魚、烏賊、季節の野菜──ひとつひとつの具材が沸きたつ油の中で命を帯びる。菊亭では、綿実油と淡口の胡麻油を調合し、代々継ぎ足されてきた秘伝の丼つゆを用いて味を整えているという。揚がった天ぷらは、皿に並べられた後、視線を誘う形で丁寧に撮影された。 味の記憶を追えば、衣は香ばしく程よく厚さを残し、その中に食材の瑞々しい旨味を封じ込めている。丼つゆは濃すぎず、しかし揚げたてを引き締め、天ぷらを包む余白を感じさせる。天ぷらとご飯、器、湯気、その全体が呼吸しながら写り込むように心を配った。
撮影を終え、ライトを落とした店内で一服。丸の内という現代都市の心臓部で、昭和の風情を今に伝える空気が、カメラのファインダー越しにずしりと伝わる。菊亭という名が、幣原という人物を通して、この店と町を歴史に結びつけていることを実感した。
東京の老舗を紹介する一冊。その頁に、この江戸前の衣の音が、少しでも鼓動を伝えられたならば幸いである。
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