静けさを纏う揚げ色 — 鳥つね「しんじょう揚げ」

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──9月26日、『東京老舗名店』(ぴあMOOK刊)の取材で湯島・鳥つねを訪ねた。大正元年(1912年)創業、親子丼の名店として広く知られながら、夜は鶏鍋や地鶏料理のコースを供する老舗である。今回レンズを向けたのは、そのコースの中に据えられた「しんじょう揚げ」だ。  


器に盛られた揚げ物は、声高に主張することなく、ただ淡い揚げ色を纏い、静かな気配を漂わせていた。衣は驚くほど繊細で、光を受けると表面に柔らかな陰影が浮かぶ。撮影にあたり、私はライティングを抑制し、その質感の奥行きを丁寧に写し取ることに心を砕いた。香ばしさと鶏の滋味が、視覚から立ち上がるように。  


鳥つねの「しんじょう揚げ」は、鶏のすり身を丹念に仕立てたもの。ひと口すれば、しっとりとした舌触りと共に鶏本来の旨みが広がり、衣の香ばしさが重なる。常連客の中には「これだけでご飯が欲しくなる」と評する声もあるほど、滋味深く印象的な存在である。  


親子丼の濃厚さを知る人にとっては、また別の角度から鶏の奥行きを感じさせる料理。コースの中で穏やかな呼吸を作り、食べ手の舌を静かに整えていく。撮影を通じて、その佇まいを画に留められたことは、写真家としての確かな歓びだった。  


湯島の老舗が代々守り続けてきた鶏料理の世界。その一端を担う「しんじょう揚げ」は、派手さを控えながらも、深い余韻を静かに刻み込んでいた。



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