RAW現像で何をしているのか?
料理撮影・メニュー撮影で「プロに撮影依頼する意味」が決定的に変わる理由
冒頭結論:料理撮影の仕上がりは「RAW現像」でほぼ決まる
結論からお伝えします。
料理撮影・メニュー撮影の仕上がりは、撮影技術以上に「RAW現像」でほぼ決まります。 一般的な写真のファイル形式はJPEGです。 このJPEG画像は、実はカメラ側で自動的にRAW現像が行われた結果として生成されています。 コントラストや色味、シャドウの処理などをカメラが自動で判断し、 「平均的に見える写真」として仕上げたものがJPEGです。
一方、一般に言われる「RAW現像」とは、 フォトグラファー自身が
・コントラスト
・色味
・シャドウの深さ
・ハイライトの扱い
などを意図をもって手動で調整し、最終的なJPEG画像を作り上げる工程を指します。 そのため、RAW現像にはフォトグラファーの美意識と経験が如実に反映され、 同じ写真でも驚くほど仕上がりに差が生まれます。
RAW現像とは何か?多くの人が誤解している前提
「RAW」という言葉は「生」を意味します。 料理に例えるなら、RAWデータは食材そのものです。 腕の良い料理人であれば、 焼く・煮る・味付けをすることで、 同じ食材からでも全く違う料理を生み出すことができます。 一方、カメラで自動生成されたJPEG画像は、 いわばコンビニ弁当のようなものです。 すでに完成しており、あとから手を加えられる余地はほとんどありません。 プロが行うRAW現像とは、 フラットな状態の画像に対して、 意図的に「味付け」をしていく作業に他なりません。
なぜRAW現像は、プロでも説明できない人が多いのか
実は、RAW現像をきちんと説明できないプロカメラマンは少なくありません。 理由は明確です。 スナップ撮影しか行っていないカメラマンは、RAW現像をほとんどしないからです。 スナップ撮影の現場では、 「すぐに写真が欲しい」という要望が強く、 カメラをJPEG設定にして「撮って出し」で納品するケースが一般的です。
そのため、RAW現像そのものを
・知らない
・必要性を感じていない
というカメラマンも多く存在します。 スナップ写真であれば、 オート設定でシャッターを押しても、 それなりに綺麗な写真が撮れます。 しかし、料理撮影ではそれでは通用しません。
料理撮影では、いかにドラマティックに、美味しそうに表現できるかが問われます。
明るさ調整だけではない、料理撮影におけるRAW現像の本質
料理撮影におけるRAW現像は、 単なる明るさ調整ではありません。 主に次の要素を精密に調整します。
・色
彩度を操作することで、料理を鮮やかに見せる
・質感
コントラスト、白レベル、黒レベルを調整し、食感を強調する
・立体感
ハイライトやシャドウを調整し、奥行きを出す
・温度感
色温度を調整し、温かさ・冷たさを自在に表現する
これらはすべて、 料理を「美味しそうに見せるため」の調整です。
なぜそこまで手間をかけるのか?料理撮影におけるRAW現像の目的
プロの料理撮影がなぜ違って見えるのか。 その最大の理由が、RAW現像を前提として撮影している点にあります。 特によく使う操作のひとつが「彩度」です。 彩度を適切に上げることで、 実物以上にシズル感を感じさせることができます。 また、精緻なライティングによって 適度なコントラストやシャドウ、ハイライトが付いたRAWデータは、 それだけでも存在感があります。 そこからさらに、 黒レベルをマイナス側に調整すれば、 一気にクールで引き締まった印象にすることも可能です。 相乗効果で、彩度をさらにドラマチックに上げることもできます。
RAW現像で決定的な差が生まれるポイント(メニュー撮影の実例)
RAW現像の最大の強みは、 画質を劣化させずに自由な調整ができることです。 JPEG画像でも彩度やコントラストの調整は可能ですが、 手を加えれば加えるほど画像は劣化し、 色が破綻することも珍しくありません。 明るさやコントラストの調整でも同様です。 RAWデータは「生の素材」です。 醤油味にも味噌味にも自由に仕上げられます。 一方で、JPEGは完成品であり、 別の味付けにすることはほぼ不可能です。
料理撮影で「撮って終わり」の写真が使えない理由
カメラが自動生成したJPEG画像は、 すべてが平均的な写真になりがちです。 彩度も、コントラストも、シャドウも、 すべてが無難である反面、写真に主張がありません。 その結果、 お客様の目に留まらない写真になります。 さらに、JPEGで撮影された画像は、 後から編集しようとしても、 手を加えるほど画質が劣化してしまうため、 思い切った調整ができません。
メニュー撮影・料理撮影を撮影依頼する際に確認すべきRAW現像の視点
撮影依頼をする際は、 以下の点を必ず確認してください。
<どこまで仕上げる前提か>
「RAWで撮りますが、レタッチは有料」というケースは珍しくありません。 私はRAW現像やレタッチまで含めて一つの料理写真と考え、 明らかな失敗写真を除き、すべて仕上げて納品しています。
<誰が現像しているか>
RAW現像を外注に出しているフォトグラファーもいますが、 撮影者の意図と完全に一致するとは限りません。 撮影後の処理まで責任を持つことが、本来の姿だと考えています。
<用途を想定しているか>
イメージ重視の写真であれば、 シャドウや黒レベルを活かした表現が有効です。 一方、グルメサイト用など内容を伝える写真では、 食材や調理法が分かる表現が求められます。
フードフォトグラファーに撮影依頼する意味は「仕上げ」にある
精緻なライティングを施した写真は、 一見するとそのまま使えそうに見えます。 実際、 佐原のオーベルジュ・ド・マノワール吉庭様のオーナーからは、 テザー撮影中に 「この画像、今すぐ欲しい!」 と言われることもあります。 それでも私は、 RAW現像を行わない状態では完成とは考えていません。 仕上げまで行ってこそ、フードフォトは完成します。
まとめ:RAW現像を語れないカメラマンに料理撮影を任せてはいけない理由
料理撮影では、 テリやツヤが美味しさの決め手になります。 これらはライトを反射させて表現しますが、 デジタルカメラの特性上、 反射が強いと白飛びしやすくなります。
RAW現像を理解していないカメラマンは、 白飛びを恐れるあまりツヤを出さない、 あるいは白飛びした写真を量産してしまう危険があります。
一方、RAW現像を理解しているフードフォトグラファーは、 白飛びギリギリまで攻めたライティングを行い、 現像を前提としてハイライトをコントロールします。 その結果、 キラキラと輝く料理写真が完成します。 RAW現像を語れないカメラマンは、 料理写真が撮れない。 これは、ほぼ間違いありません。
料理撮影の依頼については、 「料理撮影の依頼完全ガイド」でまとめています。