スマホやAIで料理写真が撮れる時代に、プロの料理カメラマンが必要とされる理由

query_builder 2026/09/04 料理撮影における飲食店経営戦略
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スマートフォンやAIの進化によって、料理写真は誰でも簡単に撮影・加工できる時代になりました。しかし、料理を「きれいに写す」ことと、「料理の魅力を正確に伝える」ことは同じではありません。フィルム時代から料理撮影に携わってきた経験をもとに、料理写真におけるライティングの重要性、プロと自前撮影の違い、AIでは再現しにくい料理写真の価値について解説します。

著者プロフィール

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平野慎一(ひらの しんいち)

フードフォトグラファー

ラ・クレアシオン(La Creación)代表


料理撮影・メニュー撮影を専門に、飲食店の現場で撮影を行っているフードフォトグラファー。 1993年より料理撮影専門の広告写真スタジオに所属し、2003年に独立。 以降、首都圏を中心に多数の飲食店で実務ベースの料理撮影を手がけている。 料理を「作品」ではなく、メニューとして選ばれ、注文されるための商品として捉え、 撮影からRAW現像・仕上げまでを一貫して担当。 メニュー、グルメサイト、販促用途など、写真が使われる場面を前提に設計する撮影を重視している。 食べログ・ぐるなびなどのグルメサイト用写真に課題を感じたオーナーからの撮影依頼も多く、 料理の美味しさや質感を正しく伝え、集客や注文につながる写真制作を得意としている。

ラ・クレアシオン
住所:

〒340-0056

埼玉県草加市新栄1-13-5 サニーヒルズ103

写真は簡単になった。でも、料理撮影が簡単になったわけではない

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カメラはフィルムからデジタルへ変わり、現在ではスマートフォンでも驚くほどきれいな写真が撮れるようになりました。


これは写真を撮る側にとって、とても大きな進歩です。


フィルム時代には、撮影するだけでもフィルム代や現像費が必要でした。プロの料理撮影では、撮影前にポラロイドでライティングや露出を確認することも多く、そのポラロイドが1枚550円。当時のメニュー撮影では100枚程度使うこともあり、テスト撮影だけでも決して小さな費用ではありませんでした。


しかも、フィルムは撮影後に色味や明るさを自由に変更できません。


だからこそ、当時の料理カメラマンには「この一枚で決める」という技術が求められました。


アングルも、ライティングも、露出も、撮影前に判断する。


無駄にシャッターを切ることができなかったからこそ、最初から完成形をイメージして撮影する訓練ができたのだと思います。


現在はデジタルになり、何枚撮影してもフィルム代はかかりません。テザー撮影なら、その場でモニターを確認しながら撮影できます。


これは大きなメリットです。


しかし、「何枚でも撮れる」ことと、「最初から良い写真を作れる」ことは別の話です。


料理撮影では、現在でも撮影前に完成形をイメージし、料理に合わせて光を設計する技術が必要です。

料理撮影の専門性は、カメラよりも「光」にある

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私が料理撮影を専門としてきて、最も重要だと考えているのがライティングです。


一般的なスナップ撮影であれば、自然光のきれいな場所でスマートフォンを構えるだけでも、かなり良い写真が撮れるようになりました。


ところが、料理はそれだけでは美味しそうに見えません。


料理には、食材の質感、テリ、焼き色、立体感、透明感などがあります。


それらをどのように見せるかによって、同じ料理でも写真の印象は大きく変わります。


例えばストロボをカメラの上に取り付け、料理の真正面から光を当てるだけでは、料理の立体感や質感を十分に表現できません。


料理によって、サイドから光を入れることもあれば、斜め後ろから光を入れることもあります。逆光を利用することもあります。


重要なのは、**「この料理には、どの方向からどのような光を当てれば一番美味しく見えるのか」**を判断することです。


私自身、アシスタント時代には3〜6灯のストロボを使った料理撮影の現場で、光を学びました。


当時はストロボの閃光そのものを見ることはできません。 師匠から繰り返し言われたのは、 「影を見ろ」 ということでした。


モデリングランプで確認した影、ポラロイドに写った影、そして本番のフィルムに写った影。その違いを何度も確認しました。


ストロボを少し離すとどうなるのか。


光を回すとどうなるのか。


コントラストはどう変化するのか。


そうした経験を積み重ね、ようやく「この光ならこう写る」という感覚が身についていきました。


師匠から「そろそろ撮ってみろ」と言われたとき、初めてフォトグラファーとしてスタートしたように感じています。


現在はデジタルカメラの性能も向上し、ラチチュードも広くなりました。料理によっては1〜2灯でも十分に精度の高いライティングができます。


それでも、光をどう作るかという料理撮影の本質は変わっていません。

「プロの撮影を見て覚えろ」だけでは、料理写真は撮れない

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以前、六本木のある肉料理の名店から撮影方法について相談を受けたことがあります。


お店の担当者はカメラが好きで、SNS用の写真も撮影されている方でした。


そこで私は、初心者でも扱いやすいディフューザー付きのLEDライトをおすすめし、 「料理なら、まず後ろ斜め45度から光を入れてみてください」 「店内照明が混ざると色やコントラストが不安定になるので、撮影時はLED以外の照明を消してください」 「光の反対側にはレフ板を置いてください」 と、具体的に撮影方法をお伝えしました。


ところが、実際に撮影してみると、コントラストの弱い、濁ったような写真になってしまったそうです。


光源と料理の距離や光の回り方、露出など、いくつかの原因が考えられます。


半年ほど経って、私は再びそのお店から撮影依頼をいただきました。 撮影当日、オーナー様が満面の笑みで迎えてくださり、撮影後には「これから継続的にお願いしていくと思います」と言ってくださいました。


一方、以前撮影を担当されていた方は、終始無言でした。


その様子を見て、私は「なるほど」と思いました。


これは、その方に才能がなかったという話ではありません。


「撮影方法を知っていること」と「実際に料理を見て、光を判断できること」は別だからです。


カメラマンの横で撮影方法を見ることはできます。


ライトの位置も覚えられます。


しかし、料理を置いた瞬間に、 「少し違う」 と感じたとき、何をどう変えるのか。


そこには経験が必要になります。

料理によって光を変えられるか。それが料理撮影の経験になる

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料理撮影では、すべての料理を同じライティングで撮ればいいわけではありません。


最近はサイドから光を入れ、陰影を強くしたドラマティックな料理写真もよく見かけます。


確かに、サイドライトは比較的簡単に印象的な写真を作ることができます。


しかし、すべての料理に向いているわけではありません。


例えば新鮮さを伝えたいお造りに強いサイドライトを使えば、透明感が損なわれることがあります。


ステーキでも、光の当て方によっては肉のテリが失われ、美味しそうに見えなくなることがあります。


だから私は、撮影前に必ず料理をよく見ます。 料理の形。 素材。 盛り付け。 器。


そして、その料理を作った料理人が何を大切にしているのか。


さらに、料理人とのコミュニケーションも重要です。


シェフは、自分が作った料理をどのように見せたいのかを明確に持っています。


その意図を汲み取り、写真として表現する。


「このフォトグラファーは料理を分かっている」 そう思ってもらえるかどうかは、撮影の最初の段階で決まることもあります。


料理撮影の経験とは、単にストロボを使えることではありません。 料理を観察し、料理人の意図を理解し、その料理に適した光を判断すること。


私はそこに専門性があると考えています。

AIで「プロが撮ったような写真」は作れるようになった

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そして現在、料理写真を取り巻く環境を大きく変えているのがAIです。


例えば、スマートフォンで撮影したカレーや餃子、かけそばなどの写真をAIに渡して、 「プロのフードフォトグラファーが撮影したような写真にして」 と指示すると、驚くほど綺麗な画像が生成されることがあります。 しかも、場合によっては無料でできてしまいます。


これなら、 「もうカメラマンはいらないのでは?」 そう考える経営者が出てくるのも無理はありません。


実際、私自身もAIの影響を受けました。 一時期、撮影の依頼が大きく減りました。


ところが、今年になって以前のお客様から、再び撮影依頼をいただくことが増えてきました。


そして、戻ってきたクライアント様から不思議なくらい共通して聞かれた言葉があります。


「AIってどうなんですか?」


その一言で、私はすぐに分かりました。 「みなさん、AIを試していたんですね」 と。


そして私が、 「AIは、カレーやトンカツなど、一般的な料理なら非常に上手に生成できます。ただ、お店独自の料理になると話が変わります」 とお話しすると、


「そうなんですよ!」 と、ほぼ皆さんがおっしゃいます。

AIが苦手なのは、他店にはない「その店だけの料理」

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例えばステーキ。 AIに生成させたら、 「ウチの焼き加減と違う」 となる。


お造りなら、 「盛り付けが違う」 となる。


独自性の高いフランス料理なら、そもそも料理自体が違うものになってしまうこともあります。


AIは、膨大な既存の情報をもとに「それらしい料理」を作ることには非常に優れています。


しかし、飲食店が本当に大切にしているのは、 「どこにでもある料理」ではなく、「うちの店だから食べられる料理」 ではないでしょうか。 他店との差別化を考え、料理人が工夫し、独自のメニューを作ってきた。 その料理をAIに任せた結果、 「似ているけれど、うちの料理ではない」 となってしまったら、本末転倒です。


特にメニューブックやポスター、ホームページ、グルメサイトなど、料理そのものが来店の判断材料になる場所では、実際に提供している料理と写真が違うことは大きな問題になります。


高価格帯の料理ほど、その違いは重要です。 お客様は写真を見て、 「この料理を食べたい」 と思って来店します。


だからこそ、私は料理写真については、AIが生成した「似た料理」ではなく、実際にその店で提供されている料理を撮影することに価値があると考えています。

それでも私は、AIを積極的に使っています

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ここまでAIについて書いてきましたが、私はAIを否定しているわけではありません。


むしろ、積極的に使っています。


例えばPhotoshopの生成塗りつぶしです。 コース料理では、料理や器が大きく、撮影した画像の背景が足りなくなることがあります。 そのような場合、AIで背景を生成することで、これまで撮影時に難しかった余裕のある構図を作ることができます。 器についた小さな汚れも、撮影現場で時間をかけて拭き取るより、後からAIで処理したほうが早い場合があります。 湯気の合成にもAIを利用します。 AIだけでは不自然になる場合には、自分で撮影してきた湯気の素材と組み合わせます。


なぜそこまで撮影時間を短くすることにこだわるのか。 料理は時間とともに劣化するからです。


料理は、提供された瞬間が最も美しく見えます。 その瞬間をできるだけ長く保ち、撮影に必要な作業を短時間で終わらせる。 そのためにAIは非常に役立っています。


AIは料理撮影をなくすための技術ではなく、料理撮影をより効率的に、より自由にするための道具として使うことができると私は考えています。

スマホやAIの時代だからこそ、料理撮影をプロに任せる意味

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柔らかな自然光が入る店内であれば、スマートフォンでも十分に良い写真が撮れる場合があります。


SNSへの日常的な投稿なら、それで問題ないこともあるでしょう。


ただし、その写真をメニューブックやホームページ、グルメサイト、デリバリーサイトなどで使うとなると話は変わります。


自然光は時間や天候によって光の方向や色が変化します。 そのため、料理ごとに撮影条件が変わり、写真を並べたときに色、コントラスト、明るさ、テイストがバラバラになりやすいからです。


特に高価格帯の料理では、写真そのものが「価格に見合った料理なのか」という判断材料になります。


また、デリバリーサイトでは、お客様は大量の料理写真を短時間で比較します。 そこで写真の訴求力が弱ければ、料理そのものを見てもらう前に選択肢から外されてしまうかもしれません。


私は、料理撮影とは単に料理を綺麗に写す仕事ではないと考えています。


料理人が作った料理を観察し、その魅力を理解し、料理に合わせて光を設計し、お客様に「食べてみたい」と思ってもらえる写真にする。 それが料理撮影の仕事です。


AIによって、写真を作ることはこれからさらに簡単になっていくでしょう。 だからこそ、私はAIを積極的に利用します。


一方で、他店にはない料理、料理人がこだわり抜いて作った料理、その店でしか味わえない料理。 そうした独自性のある料理こそ、実物を正確に撮影する価値があると思っています。


「AIで作ればいい」 「スマホで撮ればいい」 そう考える前に、一度考えてみてください。


他店との差別化のために、時間と手間をかけて作り上げてきた料理を、最後の写真だけAIや自前撮影に任せてしまって本当にいいのでしょうか。


私は、料理撮影を専門として、料理そのものと向き合いながら一枚の写真を作っています。


単品料理であれば1点3〜5分程度、コース料理でも1コース15〜20分程度を目安に撮影しています。 これは撮影を急いでいるのではありません。 料理が一番美しく見える瞬間を逃さないためです。


料理撮影をご検討の飲食店様、料理人様、制作会社様には、写真だけではなく、その料理をどう見せればお客様に届くのかというところからご相談いただければと思います。


料理撮影の料金や撮影の流れ、カメラマン選びのポイントについては、**「「料理撮影の依頼完全ガイド」」**でも詳しくまとめています。

ラ・クレアシオン
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料理撮影に30年以上携わり、数多くの現場で培ってきた経験をもとに、料理人や店舗が大切にしている意図を正確に読み取り、写真として再構築しています。ストロボを用いた精緻なライティングと、レタッチまでを前提とした撮影設計により、料理の質感や立体感、シズル感を安定して表現することを重視しています。「きれい」で終わらせず、料理と店の価値がきちんと伝わる写真を目指しています。

ラ・クレアシオン

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